研究課題
基盤研究(C)
ニオブ酸カリウム(KNbO_3:KN)は、極めて大きな結合係数を有し、移動体通信の多機能化、グローバル化に要求されている、弾性表面波フィルタの広帯域化に有望な圧電結晶であるが、低温に複数の相転移点があり、育成が困難である。本研究は、ニオブ酸リチウム(LiNbO_3:LN)基板上へのKN圧電薄膜エピタキシャル成長、広帯域・低損失弾性表面波フィルタへの応用を目標としている。本課題では、高周波スパッタ法による良質なKN薄膜の作製と評価、LN上へのエピタキシャル成長面の作製、KN/LN基板構造上の弾性表面波伝搬特性について検討した。1. MgO基板上へKN薄膜を作製し、配向性、組成比を評価した。まず、KN:K_2CO_3混合ターゲットを用いたスパッタでは、基板温度を下げると、K/Nb比と配向面間隔は改善されるが、配向性は劣化した。次に、Kリッチとしたターゲットでは、基板間隔の短縮により、配向性は劣化するがK/Nb比は増加した。酸素ラジカルパワーの増加により、K/Nb比は減少するが良好な配向性が得られ、面間隔がKN斜方晶に近づいた。また、AFMにより、薄膜は一様なグレイン構造をもつこと、すだれ状電極による配向膜への分極処理時に観測された変位電流から、ドメインの存在を明らかにした。2. 熱処理によるLi_2O外拡散により、LN上に斜方晶KN(200)に近い面間隔をもつ面が形成されることを明らかにし、成膜条件の最適化によってLN上へのKN結晶膜エピタキシャル成長の可能性が高いことを示した。3. LN上に理想的にKNが成長した構造に対して弾性表面波特性を解析した結果、成長方位によってはLNの7倍の35%の結合係数が得られること、リーキー表面波においてゼロ伝搬減衰が得られることを明らかにし、提案構造は広帯域・低損失フィルタに有効であることを示した。
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Jpn. J. Appl. Phys. 47
ページ: 3802-3806
Jpn. J. Appl. Phys Vol.47, No.5
ページ: 3802-380