1.SiC非{0001}面の表面改質と選択成長 陽極化成を使った方法では結晶欠陥が明瞭に現れなかったので、{0001}面で明瞭に結晶欠陥が現れた熱エッチング法を用いて表面改質を行った。熱エッチングは塩素と酸素ガスを用い、900〜1000℃で5〜30分保持した。非{0001}面のエッチング速度は{0001}面からのオフ角度に比例し、(0001)Si面に近づくほど遅くなった。(1-100)面では積層欠陥が顕著に現れた。また非{0001}面ではエッチング速度に異方性があり、SiCの晶癖が如実に現れることを世界で初めて示した。 エッチングした非{0001}面上に従来と同じ1500℃で結晶成長したとき、ファセットが多数発生したことを確認した。そこで温度を100℃上げて行うと、原子レベルで平坦なSiCを得ることができた。これは温度上昇に伴って原料のマイグレーションが促進されたことによると思われる。 2.転位の伝播機構の解明 昨年度、開発した高分解能な電子線起電流(EBIC)法を用いて、転位の伝播機構を検討した。SiCではc軸(成長方向)に貫通する転位が課題であるため、エッチングとEBIC観測を繰り返して10μm深さまで行った。多くの螺旋および刃状転位は基板から伝播していることを確認した。基底面転位はc軸と垂直方向に伝播するが、"結晶成長の初期段階ではc軸方向に転換できる"、"転位が分解し2つ以上に増える"、"2つ以上の転位が合成して減る"場合があった。これらの伝播はエッチングによる表面改質の条件と結晶成長の条件に強く依存する傾向があった。今後、エッチング条件と成長条件を検討し、無転位SiCの実現に向けた研究を進める。
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