研究概要 |
炭化珪素(SiC)はSiの限界を超える次世代パワー半導体として期待されており、電力や自動車の省エネルギーを目的として活発に研究開発が行われている。問題とされていた直径1μmを超える大型サイズの結晶欠陥も近年大幅に改善されている。しかしながら、市販のSiCウエーハは1cm^2あたり転位が10,000ケ以上存在する。そのため試作した素子特性の均一性と信頼性が問題となっている。結晶欠陥低減への道を拓くために、本研究では「SiC表面改質」と「転位伝播機構の解明」を行った。 1)転位伝播機構の解明:電子線起電流(EBIC)法に独自の工夫を行い、従来に比べ1桁以上の高い解像度(1μm)で結晶欠陥を検査できる技術を開発した。加速電圧10kVにおけるEBIC像では0.5μm間隔を開けて並んでいる結晶欠陥を判別でき、検討目標の1μm以下を達成した。本手法は非破壊で簡便な欠陥評価手法であり、基底面転位の伝播機構について詳細な解析を行った。 2)SiC表面改質:SiCエピタキシャル成長前の表面改質は熱エッチング法により行った。結晶欠陥(転位)を選択的にエッチングすることに成功し、エッチピット形状について詳細な解析を行った。熱エッチングは塩素と酸素ガスを用いた。950℃のとき、エッチング速度は4H-SiC Si面で約0.5μm/hであった。熱エッチングでSiCを削れることは古くから知られていたが、エッチピットが形成されることが料明したのは本研究が世界で初めてである。 エッチングした表面に化学的気相堆積(CVD)法を用いてSiCをエピタキシャル成長した。結晶欠陥をEBIC解析した結果、基底面転位は貫通転位に転換されていることが判明した。基底面転位を低減できたので、SiC素子を作製したとき電気特性の信頼性が大幅に改善できると考えられる。
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