研究概要 |
本研究の中核的課題であるパルスレーザーアブレーション法により低温成長(〜500℃)した(Cu,C)-Ba-O系高温超伝導膜の特性改善に向けて1)in-situ電気伝導度測定による超伝導臨界温度T_cと常伝導伝導率σの関連及び臨界電流密度の決定、2)膜/基板界面歪みの効果を調べた。 1)では、(Cu,C)-1201相薄膜のT_cが常伝導状態の伝導度σ及びその温度係数の絶対値と正相関に有ること、σ>500S/cm以上のときに良好な超伝導特性が得られることが確認された。T_c>40Kの試料は(T/T_c)<0.7,自己磁場化で10^6A/cm^2以上の高い臨界電流密度を持つことが見出され、(Cu,C)-Ba-O系が優れた低成長温度・超電導薄膜材料であることが明らかとなった。2)では、SrTiO3基板と(Cu,C)-1201相の中間的格子定数を持つSrCuO_2バッファ層上に1201相膜が原子オーダーの平坦性をもってエピタキシャル成長すること、SrCuO_2層の厚さにより1201相膜のa軸長を変調可能であることが見出された。SrCuO_2層厚を最適化したところ、T_<c-onse1>が挿入無しの状態の約60Kから70K以上に上昇することが見出された。この値はCuO_2面1層系として高い部類に属している。 これらの結果は、研究実施者らが発見した(Cu,C)-1201薄膜が500℃程度の低温成長であるにもかかわらず、高成長温度が必要な系と同等の輸送特性を有する優れた薄膜材料であることを実証するものであり、低成長温度・エレクトロニクス用超伝導薄膜材料の創成という本研究の目的は達成されたものと考える。また、バッファ層挿入により得られた超伝導特性の改善は多層人工格子化によるCuO2面への歪み・キャリア選択的注入の制御の有効性を示唆するものであり、一層の特性向上のための足掛りが得られたと言える。
|