本研究は可視光応答する光触媒活性な酸化物半導体薄膜を開発することを目的としている。可視光応答する光触媒活性な酸化チタン薄膜は、我々の数年前からの研究で酸化チタン薄膜を作製するときに同時に窒素や炭素を添加することで、酸化チタンの禁制帯中に窒素および炭素による不純物帯を形成し、吸収端が長波長側にシフトすることを確認している。本研究では、酸化チタン(TiO_2)に加え、酸化タングステン(WO_3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO_3)の薄膜をRFスパッタ法を用いて作製し、光触媒活性な酸化物半導体薄膜を得る。WO_3薄膜やSrTiO_3薄膜はエレクトロクロミック材料や誘電体材料としては馴染みなものであり、エネルギー帯構造(価電子帯のトップと伝導帯の底(水の分解に係る))は酸化チタンとほぼ同じにも係らず、光触媒活性な材料としては開発されて来なかった。平成18年度は、これらの薄膜の製膜に当って、光触媒特性が高活性である製膜条件の確立を目標として研究を進めたが、スパッタ用高周波電源のトラブルに見舞われ、最適化するまでには至っていない。酸化ングステンやチタン酸ストロンチウムの薄膜は、それぞれの酸化物を出発原料として、高周波スパッタ法を用いて、基板温度200〜400℃、スパッタガス(Ar+O_2)圧1Paのスパッタ条件で、ソーダガラス(soda lime glass)基板上に作製しており、酸化タングステンおよびチタン酸ストロンチウムの薄膜を得ている。薄膜の結晶構造はX線回折で評価している。
|