本研究では酸化チタン(TiO_2)薄膜に代わって、光触媒反応活性が期待できるチタン酸ストロンチウム(SrTiO_3)薄膜を高周波スパッタ法で作製し、光触媒反応の可視光応答化に焦点を当てて研究を進めた。SrTiO_3薄膜の作製条件が十分に最適化されていないが、X線回折パターンから石英ガラス基板やパイレックス基板上にSrTiO_3の(100)面、(110)面、(200)面の回折ピークが観測され、ペロブスカイト構造をもつ多結晶薄膜が形成されていることが確認できた。SrTiO_3薄膜の吸光度の波長依存性(通常は薄膜の透過率および反射率の波長依存性、または偏光解析)から吸収係数(α)を算出し、[αE(hν]^<1/2>-E(hν)(E(hν)は光子エネルギー)プロットの外挿値から見かけ上のバンドギャップが求まり、3.2〜3.3eVであり、概ね妥当な値を示した。これらの結果から高周波スパッタ法を用いて、SrTiO_3薄膜が形成されていると確認できる。しかし、紫外線照射下でメチレンブルーの分解試験を行なったが、光触媒反応を確認できなかった。SrTiO_3薄膜が形成されているにもかかわらず、光触媒反応を示さなかった理由は現時点では把握できていない。チタン酸ストロンチウム(SrTiO_3)薄膜の紫外光、可視光領域における光触媒反応を活性化させるための薄膜作製条件の最適化が不十分であり、初期の目的を達成することができなかった。高周波スパッタ法を用いて作製された酸化チタン(TiO_2)薄膜は紫外光で強い光触媒反応を示し、堆積時の基板温度を精密に制御することによってカチオンやアニオンを添加することなしに可視光応答化することが報告されている。酸化チタン(TiO_2)薄膜に比較して構成元素がSr、Ti、Oと3元素になり、TiO_2薄膜より複雑になったことも要因の一つであろう。
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