研究概要 |
まず,既存の装置に酸化膜を作製できるチャンバーを増設した。これは,試料加工行程で絶縁膜を形成する行程が有るが,現有の装置では時間が長くかかるため,試料のショットキー特性の劣化が生じている可能性が考えられたためである。そのため,基板冷却の方法と基板-ターゲット間を可変出来るようにし,スパッタレートをコントロール出来るようにした。また,TMR部を作製する部分を独立させ,酸素を導入した時に他のターゲットに影響を与えないようにするためでもある。 次に,MOMOM構造では,最も重要であるTMR部の作製法を検討した。即ち,DCとRFプラズマ酸化でTMR部を作製し,特性を評価した。その結果,DCプラズマ酸化の方が,RFプラズマ酸化に比べて再現性が良いことや,トンネル接合を2重にした時の作製条件を明確にすることが出来た。これらの結果を基に,MOMOM型の3端子素子(MTT)を作製し,コレクタ電流のベース電圧依存性から電流透過率,電流変化率を比較検討した。2重トンネル接合を持つMTTでは,ショットキー障壁を持つSVTより高い電流透過率を示すことが確認できた。 さらに,19年度に新たにグラニュラTMR膜をベース部に使ったトランジスタ構造を試みるために,積層構造で大きなMRを示すMgOを使い,Fe-MgOグラニュラ膜を作製し磁気抵抗効果の基礎的データを検討した。Fe-MgO膜は値は小さいが,膜厚が10nm以下でも比較的容易にMRが得られることが分った。
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