研究概要 |
ダブルペロブスカイト酸化物Sr_2FeMoO_6はハーフメタル強磁性体であり、多結晶試料において室温で粒界トンネル起因した大きな磁気抵抗効果が報告され、電子デバイス材料として注目されている。一方、単結晶試料でも低温で比較的大きな磁気抵抗効果を持っている。本研究では、あえて低温での磁気抵抗効果に着目したい。元素置換やキャリア濃度を制御した単結晶の育成を行い、低温での磁気抵抗効果の大きさの制御やその要因について明らかにしたい。とりわけ、その磁気抵抗効果と自己組織化との関連性について精査にすることを目的とする。 本年度は、まずFe置換によってキャリア濃度を制御した多結晶Sr_2Fe_<1+x>Mo_<1-x>O_6の物性を調べた。その結果、x=0.4で結晶構造(格子定数)、電気伝導性、磁性が大きく変化することを見出した。すなわちxの増加に伴いx=0.4を境に、格子定数は減少の度合いが急激に増加し、電気抵抗は極大をとり減少に転じ、磁性は強磁性から反強磁性に変わることがわかった。これらの変化は、Fe, Moのイオン価数がそれぞれ+3から+4、+5から+6へとxの増加とともに変わることに起因していると考えられる。現在、これらの結果について、論文を執筆中である。また、予備実験では低温での磁気抵抗効果もこのx=0.4で最大となっており、強磁性相と反強磁性相との競合・自己組織化との関連性について今後明らかにしていきたい。それには、単結晶が不可欠である。 そこで、Sr_2Fe_<1+x>Mo_<1-x>O_6単結晶の育成についても、すすめている。x=0については、直径5mm,長さ70mmの良質単結晶が、安定して得られるようになった。また、x=0.4についても今後育成条件を改良していく必要があるが、直径2mm,長さ10mmの結晶の育成に成功している。今後は、この単結晶を用いた実験に重点を移していく予定である。
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