研究概要 |
ダブルペロブスカイト酸化物Sr_2FeMoO_6はハーフメタル強磁性体であり、多結晶試料において室温で粒界トンネル起因した大きな磁気抵抗効果が報告され、電子デバイス材料として注目されている。一方、単結晶試料でも低温で比較的大きな磁気抵抗効果を持っている。本研究では、あえて低温での磁気抵抗効果に着目したい。元素置換やキャリア濃度を制御した単結晶の育成を行い、低温での磁気抵抗効果の大きさの制御やその要因について明らかにしたい。とりわけ、その磁気抵抗効果と自己組織化との関連性について精査にすることを目的とする。H19年度は、Fe置換によってキャリア濃度を制御した多結晶Sr_2Fe_<1+x>Mo_<1-x>O_6の物性を精査した。その結果、他の研究から従来予測されていたx=1/3ではなく,x=0.5近傍で結晶構造(格子定数)、電気伝導性、磁性が大きく変化することを見出した。すなわちxの増加に伴い、格子定数はx=0.5を境に減少の度合いが急激に増加し、電気抵抗はx=0.5へ向けて発散的に増大し、x=0.5を超えると減少に転じ、磁性はx=0.5を境に強磁性から反強磁性に変わることを明らかにした。また低温での磁気抵抗効果もこのx=0.5近傍で最大となっており、デバイスへの応用を考える上でも、このx=0.5での大きな物性変化のメカニズムを明らかにすることは重要である。そのとき,その境がx=0.5=1/2のきりのいい分数なのか,そうでないのかを明らかにすることは重要であろう。そこで今後単結晶による物性精査に重点をおいていく。 単結晶の育成を、現在精力的にすすめている。X=0については、直径5mm,長さ100mmの良質単結晶が、安定して得られている。一方、x=0以外の試料では最大でおおよそ直径2mm,長さ10mmの結晶の育成にとどまり、今後結晶の質も向上させていく必要がある。
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