研究概要 |
ダブルペロブスカイト酸化物Sr_2FeMoO_6はハーフメタル強磁性体であり、多結晶試料において室温で粒界トンネル起因した大きな磁気抵抗効果が報告され、電子デバイス材料として注目されている。一方、単結晶試料でも低温で比較的大きな磁気抵抗効果を持っている。本研究では、あえて低温での磁気抵抗効果に着目し、元素置換やキャリア濃度を制御した単結晶の育成を行い、低温での磁気抵抗効果の大きさの制御やその要因、特に自己組織化との関連性についで明らかにしたい。H20年度は、Fe置換によってキャリア濃度を制御したSr_2Fe_<1+x>Mo_<1-x>O_6においてH19年度にわれわれが見出した、x=0.5近傍の同門領域で起こる正方晶-立方晶結晶構造転移、金属-絶縁体転移、強磁性-スピングラス転移のメカニズムをより詳細に調べるために、まず, その境がx=0.5=1/2のきりのいい分数なのか, そうでないのかについて多結晶試料を用いて精査した。その結果, x=0.42を境にすべての転移が起こることがわかった。この結果は、Feの電子状態について3d^6Lの大きな安定性を示唆するものであり、MoとFeの混成軌道を占めるキャリア電子がなくなることによって、金属一非金属転移が生じ、二重交換相互相関作用によってダブルペロブスカイト酸化物における強磁性が発現していると考えられる。また構造転移についても、先のキャリア電子がなくなることにより、イオン半径の小さい+4価のFeが生じ始めるためと考えられる。 一方、単結晶の育成も精力的にすすめ、x=0.4までの単結晶の育成に成功し、多結晶と同様な物性を示すことを明らかにした。今後は転移領域を超えた単結晶の育成を行い、自己組織化を含めたミクロな観点で、この転移の詳細を明らかにしていきたいと考えている。
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