研究概要 |
本研究では,絶縁マトリックスに有機物を使用した新規なグラニュラ薄膜である金属-高分子グラニュラ薄膜を作製するために,電気化学的な手法である"金属-有機物同時電析法"を開発した.有機物の析出には水溶性樹脂を使用し,金属の析出にはCoを使用して実験を行った.その結果,以下の結果が得られた. (1)EQCMを使用して水溶性樹脂とCoSO_4の電気化学反応の測定を行った.その結果,水溶性樹脂の析出反応は,-0.3Vから-0.9Vの問では硝酸-亜硝酸還元反応による析出が始まり,-0.9Vより卑な電位で硝酸-亜硝酸還元反応と水の分解反応によって析出することが分かった,CoSO_4の析出反応は,-0.7Vから還元反応によってCoが析出することが分かった.このことより,定電位での電析によって水溶性樹脂とCoを同時に析出させるためには,-0.7Vより卑な電位で電析を行えば良いことが分かった. (2)ハルセル試験によって,溶液組成や電流密度が電析に及ぼす影響を詳細に調べた.その結果,1)硝酸-亜硝酸還元反応を利用して樹脂を析出させる,2)pH調整にDMAEを使用する,3)金属塩には酢酸コバルト(Co(CH_3COO)_2)を使用する,4)Co濃度は30mM程度とする,5)電流密度は1.29mA/cm^2付近とする場合に強磁性のヒステリシスと高抵抗を示す膜が作製できることが分かった. (3)金属と有機物が混在する薄膜を,水溶液中の電析により作製できたことが,FTIRの結果と磁気特性の測定結果より,確認できた. 以上のように,金属-高分子同時電析法によって,Coと水溶性樹脂が共存した膜を作製することに初めて成功した.
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