金属イオンと水溶性樹脂を含む反応溶液を使って、金属-高分子同時電析によって金属-高分子ナノグラニュラ薄膜の作製を行った。 その結果、以下のような研究成果が得られた。 (1)成膜中に反応溶液を撹拌することが重要であることが分かっているが、従来、ガラス棒を使って手動で撹拌していたものを改良し、自動で溶液を撹拌する装置を作製した。市販のマグネットスターラーなどを使うとビーカーの底部と上部で流速が異なり、薄膜が不均一に成膜されることが分かっていたため、モーターによって板状の撹拌板が基板の前後を移動して溶液を攪拌する自動攪拌装置を開発し、これにより基板面内で流速が均一になるように工夫した。 (2)撹拌方法が膜の析出速度や厚さ方向の組成の分布、磁気特性、結晶構造など大きく影響を与えることが分かった。これは、基板と溶液の界面におけるpHの上昇が撹拌方法に依存していることや、水溶性高分子の基板への供給が撹拌方法に依存しているためであると考えられる。 (3)金属としては、Co単体またはNi-Fe合金が析出するための実験条件を検討した。また、高分子としては、エポキシとポリプロピレンオキサイドを析出させた。その結果、Co-エポキシ薄膜、Ni-Fe-ポリプロピレンオキサイド薄膜の析出に成功した。電流密度やpH、温度が成膜状況に大きく影響を与えことを見出し、特にCo-エポキシ薄膜は中性領域、Ni-Fe-ポリプロピレンオキサイド薄膜は酸性領域で析出することを見出すことができた。
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