ex-situ法線材作製に用いるMgB_2粉末を有機酸溶液で処理すると、結晶粒の微細化や炭素置換が図られ、臨界電流密度(J_c)特性が大幅に向上することを18年度に見出した。溶液処理による炭素置換量は粒子表面への溶媒吸着に因るものであり、微量であるので、19年度は更なる炭素置換量の増大などで一層J_cの特性の向上を目指した。 炭素源として、MgB2粉末にSiCを意図的に添加したが、格子定数の変化から見積もった炭素置換量に変化が見られず、Sicなどの炭素化合物添加による炭素置換は、ex-situ法では起こりがたいことが明らかとなった。即ち、本手法での炭素置換によるJ_cの更なる大幅な向上は、容易でないものと思われる。 一方、溶液処理によって結晶粒間結合はダメージを受け、の向上の阻害要因となることを18年度に見出したが、本年度は、溶液の種類によってその度合いが影響されることを明らかにした。即ち、溶液を適切に選択すればダメージを抑制でき、J_cの向上が図られる可能性があると思われる。 以上のことから、ex-situ法によるJ_c特性の向上には炭素置換が有効であるが、炭素化合物添加では置換量は微量であり、予め炭素置換した粉末を充填粉として用いることを検討する.ことが必要であうと思われる。この炭素置換MgB_2粉末と、結晶粒間結合へのダメージを極力抑えるような溶液処理法との併用が、J_c特性の向上にどれほど有効であるかを明らかにすることが今後の課題である。
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