研究課題
基盤研究(C)
本研究は光デバイスにおける非線形導波路中の複雑な光伝播現象を統一的に理解する手法を確立することを目的としており、平成18年度はまず従来の有限差分時間領域法(FDTD法)を用いた非線形3次元電磁界解析の並列計算による半導体マイクロリング共振器における増強4光波混合(増強FWM)と波長変換効率向上に関する研究を行なった。通常の非線形媒質における4光波混合では一般に媒質の非線形特性が十分大きくないためその効果も実用上十分ではない。しかし、リング共振器を光導波路に電磁的に結合させ、光の周波数をその共振周波数と一致させることにより共振による場の増強効果があらわれ波長変換効率を約24dB以上大きくできることが予想されており、このことをFDTD法を用いて数値的に確認した。これによって小型の光集積回路における高効率光波長変換が可能であることが示された。4光波混合においては、信号光と波長の異なるポンプ光を同時に非線形媒質に入射し、波長変換された信号光(変換光)を取り出すが、最大波長変換効率を得るためにはこれらの光の周波数を共振器の共振周波数に一致させる必要がある。しかし、半導体材料の媒質特性は周波数分散が大きく、また、光集積回路に用いられる強導波型光導波路も原理的に分散が大きいため、信号光、ポンプ光の波長を共振周波数に一致させた場合、変換光の波長が対応する共振周波数からずれ、最大効率を得られないという問題があった。この間題を解決するため、半導体の材料分散と光導波路の周波数分散を同時に考慮し、周波数分散非線形FDTD法を用いて解析を行なった。その結果、化合物半導体の材料分散特性と導波路分散特性が互いに打ち消し合う効果が確認され、構造および半導体材料組成を適切に選択することにより特定の波長領域で動作する光集積回路導波路において波長変換効率を向上させ得ることを示した。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
Optics Express vol.14,no.26
ページ: 12782-12793
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IEEE J. Selected Topics in Quantum Electronics vol.12,no.6
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