本研究では、光デバイスにおける非線形導波路中の複雑な光伝播現象を統一的に理解する手法を確立することを目的とし、1.有限差分時間領域法(FDTD法)を用いた非線形3次元電磁界解析の並列計算による、半導体マイクロリング共振器における増強4光波混合(増強FWM)と、同共振器の波長変換効率向上に関する構造の最適化、および、2.非線形ブラッグ反射導波路からなる光双安定デバイスのスイッチング電界強度しきい値低減に関する研究を行なった。これらの研究課題は、それぞれ小型高効率光波長変換素子、全光スイッチ(あるいは光論理回路)の実現のための有力な候補技術であり、近年非常に活発に研究がなされている。1では、信号光と波長の異なるポンプ光を、半導体非線形媒質からなるマイクロリング共振器に入射し、波長変換された信号光(変換光)を得る現象(4光波混合)をFDTD法を用いて解析した。半導体の材料分散と光導波路分散を同時にモデル化することにより、これらの光の周波数を共振器の固有周波数に一致させ、波長変換効率を向上させ得ることを示した。2では、導波路型光双安定デバイスのスイッチングに必要な入射光電界強度の低減、効果的な光スイッチング動作を得るための構造最適化、安定-不安定領域間遷移のダイナミクスに関し、FDTD法による解析を行なった。また、光スイッチングの実験的検証の可能性について定量的に検討し、最適構造において、現在の半導体レーザで可能な光出力レベルで動作させ得ることを示した。
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