研究概要 |
半導体集積回路は,高度電子情報処理社会を支える上で最も基盤となるハードウェア技術であり,近未来での実現が予想されているユビキタス社会の根幹を担うキー・コンポーネントとしても,その高性能化・高機能化が引き続き強く求められている。本研究では,この半導体集積回路の最小構成ユニットであるSi MOSFETのポストスケーリング時代における新材料及び新構造MOSFETの性能予測と最適素子構造設計について研究することを目的としている。 平成19年度は,新チャネル材料として注目されているGeとIII-V族化合物半導体を用いた新構造MOSFETの電流駆動力評価に取り組んだ。その結果,III-V族MOSFETでは,軽い閉じ込め有効質量による反転層広がりを抑えるために,極薄チャネル構造が必須であることと,Si MOSFETに対する優位性を維持するためには,ソース・ドレイン寄生抵抗を低減する必要があることを明らかにした。 また,SiナノワイヤFETの3次元量子輸送シミュレータの開発にも着手した。将来の原子レベルでのデバイス設計ツールとして,量子力学的ウィグナー分布関数に基づく第一原理デバイスシミュレータの開発を目指しており,今年度はまず,バリスティック輸送下での,キャリア量子輸送特性と電流-電圧特性におけるソース・ドレイントンネリングの影響を正確に評価することができる3次元量子輸送シミュレータの構築に取り組んだ。古典的手法で得られた結果と比較することで,開発したシミュレータの妥当性を検証することに成功しており,来年度以降の研究による発展を期待している。
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