まず、異方性を呈するテンソル型負透磁率を持つスラブ状媒質について、より実用構造に近い裏面を導体で接地した構造におけるモードに関するより詳細な数値解析を進め、存在するモードの特徴や特異な現象についての検討を行った。これまで一方の材料定数のみが負であるSingle-Negative媒質中では存在できないと考えられていた導波モードが、透磁率の各テンソル成分の正負値の組合せ及び分散の有無によって存在可能である事を確認し、存在可能なのは、ある特定の偏波を有するモードのみであり、後進波の特徴を有する事を明らかにした。また、金属導体で接地した場合には、接地導体の無い構造で存在するモードの内、電界分布がスラブ厚さ方向に奇対象性を持つモードしか現れないことを明らかにした。更に、モード中のエネルギー組成を調べることで、本モードが磁気的特徴の強い磁波である可能性が高いことを示した。そして、得られたモードの分散特性は同条件下で静磁近似を適用して求めた結果と非常に良く一致することからも、存在する電磁波は静磁波である可能性が高い事を再確認した。 次に、スラブ厚さを変化させた場合の分散特性を詳細に調べると、ある一定の厚さを超えると、低次のモードから分散特性に湾曲現象が現れ、進行波の特徴を有するモードも出現する事がわかった。そして、スラブ厚さが増すにつれて低次のモードから消失(カットオフ)する事も示した。これも、先に述べた静磁波の特徴である。以上の事から、人工媒質からなる異方性負透磁率を持つSingle-Negative媒質では、非磁性体で構成されているにも関わらず静磁波の伝搬を許容する性質を持っている事がわかった。 更に、メタマテリアルの試作実験を行う際は、作製した人工媒質の材料定数を測定する事が不可欠となる為、被測定物の反射・透過特性から材料定数を高精度かつ自動的に推定する方法についても検討を開始した。
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