ジョセフソン・テトロードの秘匿通信応用のためには、超伝導マイクロストリップ線路の特性を明確にすることと良質の超伝導薄膜作製技術の確立が急務である。本年度においては、時間依存のGinzburg-Landau方程式(TDGL方程式)を用いた解析及びOff-Axial DCマグネトロンスパッタ法による超伝導薄膜の作製について解析を行った。 TDGL方程式を用いて高Tc超伝導マイクロストリップ線路の伝搬損失を解析した結果、以下のような結果が得られた。 (1)c-軸配向膜を用いると損失が非常に大きく、高速な信号発生及び伝搬には適さない。その原因はc-軸方向の磁界侵入長が20μmと非常に長いことにある。 (2)一方a-軸配向膜を用いれば、100GHz以上の信号発生及び伝搬も低損失で可能であること。 Off-Axial DCマグネトロンスパッタ装置をモデル化し、Arイオンに関する運動方程式を導き、解析を行った。以下にその結果をまとめる。 (1)DCスパッタ法に比べてスパッタ開始電圧が低い理由について電子力学的に解析したところ、ターゲットの中央部分や周辺部分よりも印可磁束密度ベクトルがターゲットに平行な部分がエロージョン領域となり、高速にスパッタされ、エロージョン領域の面積が小さく、電流密度が高くなり、実効スパッタ率が高くなるためであることが分かった。
|