研究概要 |
紫外線や赤外線の非可視光領域で動作する有機EL素子の実現を目的とし、多層膜構造や量子井戸構造における物性を明らかにしながら発光特性の改良を試みた。その結果、二つの低分子系材料DCMとTPDから成る多重量子井戸構造において、量子サイズ効果と考えられる発光波長の短波長化が観測された。発光波長からキャリアのもつ量子準位を計算し、そのデータから有機半導体中の電子の有効質量を約0.5m_0と見積もることに成功した。一方、高分子系材料では紫外領域に吸収係数の最大値を持つPCAという材料に着目した。PCAの蛍光スペクトルは三つの波長395,510,650nmにピークを持つ物質であるので、電流注入によって395nmの発光サイトヘキャリアを効率良く注入する素子構造を検討した。その結果、正孔注入層などを導入する多層構造によって510nmのELを実現した。 これらの成果から、多重量子井戸構造により発光波長を人工的に制御できること、そして高分子系有機ELは積層構造と不純物添加が波長制御に有効であることを明らかとした。なお、高分子紫外EL素子に関しては特許出願準備中である。
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