研究概要 |
人体を伝送路の一部とする通信方式の伝送モデルと回路設計に必要な条件を導くため,本年度は1)周波数特性の計測2)電磁界解析3)受信回路のインピーダンス整合について研究を進めた. 周波数特性の計測においては計測に用いる金属導線のケーブルが影響を与える.平成18年度は送受信機とも電池駆動とし,受信信号電圧をPWM変調してLEDと光ファイバを用いて外部の受光・復調回路に導いた.送信機を手首に装着し,受信機入力端子を中指先端に接触させた状態で200kHz〜20MHzの帯域について計測した.ゲインは200kHzから単調に増加して10MHz付近でピークを示した.10MHzと200kHzのゲインの差は約25dBであった.同一被験者の測定日時の違いによる変動幅は約5dB,異なる被験者間のゲインの差は10dBほどの範囲に広がっていたが,個人を特定できるほどの再現性は見られなかった. 電磁界解析は,人体を線状アンテナに見立てた伝送モデルを解析するため,人体と同じ誘電率と電気伝導度を持つ角柱状の物体の側面に送信機を設置した条件について,電界および電流について解析を進めた.現在,電磁界解析プログラム用のモデルの作成を終え,単純な形状に関して金属ダイポールアンテナの特性から類推される結果に合致していることを確認した段階である. 受信回路のインピーダンス整合に関しては,受信機の入力インピーダンスを変えて受信信号電圧を測定し,受信信号電力を求めたところ,入力インピーダンスが100〜150Ω程度の時に受信信号電力が最大となった.この結果に基づき,人体を伝送路の一部とする通信方式において,受信機は人体近傍の電界を捉えているというより,むしろ人体と連続した導体として電流が流入していると考える方が適切である,と考えるに至った.
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