高密度波長多重(Dense Wavelength Division Multiplexing: DWDM)光通信は、次世代の大容量通信技術として期待されている。本研究では、DWDM光通信に必要な安定性を備え、かつ、低コストな多波長光源を新たに構築することを第一の目的とした。この光源は1つの半導体レーザに特別な位相変調をかけ、アレイ導波路格子(AWG)により分波することで、通信チャネルに必要な50GHz間隔の多波長(20波以上)を生成する。明らかに、周波数安定化するレーザは1台、予備のレーザも1種類だけでよい。更に、本研究では、この光源によるWDM伝送実験を行い、本光源のシステム適用性まで検討することを目標に掲げた。 平成19年度は、前年度に作製した多波長光源を用いた光信号伝送実験を中心に研究を進め、その評価を行った。具体的には、パルスパターン発生器と光変調器により、多波長光源を構成するAWGの各チャネルから出射した光に10Gbpsの信号をのせ、それぞれのチャネルについて信号誤り率、アイパターン特性、パワーペナルティを明らかにした。特に各チャネル間のクロストークの影響などについて詳細な検討を行い、構築したシステムのWDM光通信システムとしての適用可能性を評価した。システム構成要素の最適化を進め、実用的な目標性能である伝送距離100km、信号誤り率<10-9を達成した。これにより、将来の大容量光通信への道が拓かれた。
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