|
本研究は、多様なトラヒックを収容するマルチサービスIP網において、個々のトラヒックが要求するQoSを満たしながら、ネットワーク資源の有効利用を図るための包括的なネットワーク制御法の確立を目指している。上記の目標達成のために不可欠な基本モデルである、パケットの到着が離散時間型マルコフ到着過程に従う場合の優先権付き離散時間待ち行列の解法を開発に向けて検討を行った。入力トラヒックモデルとして、アイドル期間長が幾何分布に従う間欠入力を仮定し、オン期間においてはマルコフ型背後過程の状態に依存して複数のパケットが発生するモデルを採用した。十分に多数の背後過程の状態を用意すれば空間的変動ならびに漸近的な時間相関は自由に設定可能である。また、この入力モデルを仮定することにより、系内仕事量分布を定める際に必要となる境界ベクトルが陽に定まる。優先権付き待ち行列における下位クラスの実質的なサービス時間は、自身のサービス時間とその間に到着する上位クラスによって生成される全稼働期間の和となる。よって下位クラスの遅延解析にはこの全稼働期間の積率が不可欠である。本年度はこの上位クラスの全稼働時間の積率を上位クラスの入力カーネルの最大固有値と固有ベクトルに着目して解析を行い、上位クラスの全稼働時間の積率を入力パラメタの関数として陽に与えることが出来た。来年度はこの結果を元に各クラスの平均遅延の陽表現の導出を目指す。また、上記と並行して、優先権付き流体待ち行列に関する基本的な検討を行った。流体モデルも解析するめどは立つが、数値計算において困難が生じる可能性があることが判明した。
|
