研究概要 |
(1) Ku帯TDD/Sat. D方式の理論的特性測定:これまで、Sat. D方式の特性データはかなり収集されているが、最近の異常気象により、短期の測定データでは、詳細設計には不十分である。本年度は、Sat. D方式のデータをさらに充実するとともに、Ku帯TDD/Sat. D方式の適用による回線稼働率の改善効果を定量的に明らかにするためのデータを収集した。また、具体的な、Sat. D方式を実現するための装置を実装し、長期データを収集している。BS(110°E), JCSAT-3号衛星128°E)の衛星の18°の軌道間隔で、約5dBの降雨マージンで、約1桁(1/10)の回線稼働率の改善効果があることが明らかとなっている。今後は、これらの長期データ、理論的検討が必要である。最新の成果の一部は、2009年IEEE AP-S(アンテナ・伝搬シンポジューム)に投稿し採録された。 (2) Ku帯TDD/Sat. D方式の具体的装置構成法の検討:Ku帯TDD/Sat. D方式の実現性を確認し、設計資料を得るために、具体的な装置構成の設計を行い、必要な部品を具備して、既存の地球局を活用して、方式の一部シミュレートするための組み立てを実施し,所期の結果を得た。 TDD/Sat. D方式を目標とし、Sat. D方式装置の特性確認を目標に設計・実験を進めた。方式構成としては、Lune-Qアンテナで受信した、JSAT128°衛星とJSAT110°衛星から受信した2信号を、中間周波数帯に変換し、この2種のIF信号をレベル比較し、信号強度の大きい信号に切り替えることで、回線断の時間を短くしている。 (3) Ku帯TDD方式の特性測定:Ku帯-TDD方式の設計に当たっては、2信号間の遅延時間をどの程度にすべきかがKu帯TDD方式の実用化の可能性が左右される重要な値であり、測定データの収集を継続した。 現有の、測定系は、BS, JCSAT-3号衛星を受信するための5基のアンテナ(アンテナ直径(台数):40cm(4)、65cm(1))、を使用して衛星信号の特性を継続的に取得し、TDD方式特性の基礎データを収集した。データを処理した結果、約20~30分の遅延で、回線稼働率の改善効果があることが明らかとなった。 以上の結果は、Ku帯衛星通信方式の低コスト化・高稼働率実現のために寄与できる。
|