本研究では北海道工業大学が中心となり開発し、2006年9月26日にJAXA(宇宙航空研究開発機構)のM-Vロケット7号機で打上げられたHIT-SATから送信されるアマチュア無線帯の電波を受信し、サイトダイバーシチ効果の検討を行った。通常の衛星通信におけるサイトダイバーシチの目的は、降雨減衰などの自然現象に対応するものである。しかし、アマチュア無線帯を使用した衛星通信で最も問題になるのは、無線機さえあれば誰でも容易にアマチュア衛星通信用の周波数帯の電波を違法に送信できることである。実際に、HIT-SATにおいても北海道工業大学に設置している地上局へのダウンリンク周波数への違法無線の混信があり、データの取得が困難になる場面もあった。そこで、大学から約7km離れた地点と約80km離れた地点に受信局を設置して、アマチュア無線帯を使用した衛星通信のサイトダイバーシチ効果を確認するためのデータ取得を行った。 約7kmの近距離であってもサイトダイバーシチ効果が認められた。これは、高い指向性を持つ八木アンテナを上空に向けて受信を行うため、近距離であっても混信の強度に差が生じるためである。また、想定外であったこととして約80km離れた赤平市の工業団地内に設置した受信局では極めて混信が少なく良好な受信データが得られた。約3km離れたところに道央道、そして約6km離れたところに国道12号線が走るため、走行車両からのアマチュア無線の混信が心配されたが予想外に少なく、また、地形が盆地状であるためダウンリンクに使用しているUHF帯では周辺地域からの混信が少ないことがその原因として考えられる。 これらの結果から、アップリンクに関しては通常のアマチュア無線局は水平方向に指向性を持つアンテナを使用するため違法局の混信による影響はなく、受信局を低い山に囲まれる盆地状の人口低密集地に設置することが、アマチュア衛星の追跡管制運用に適していることが明らかになった。
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