音色可変・環境適応型"聞きやすい"ディジタル補聴器を実現するため、振幅特性が連続可変なディジタルフィルタ(振幅可変フィルタ)の最適設計を行う必要がある。本年度では、以下の2つのことについて研究を行ってきた。 (1)アナログフィルタの設計法に関する研究蓄積が膨大であるため、アナログ周波数変換法とs-z変換を行えば、可変低域通過ディジタルフィルタ、可変帯域通過ディジタルフィルタ、可変高域通過ディジタルフィルタを得ることができる。その基礎研究として、まずKang's一般化1次s-z変換モデルを用いて、アナログフィルタをディジタルフィルタに変換するための一般化パスカル行列の導出とその要素表現式、一般化パスカル行列の境界要素から内部要素を再帰的に計算するための漸化式の導出と桁落ち問題、様々な逆行列の証明、一般化パスカル行列の性質の証明を行った。 (2)通過域端周波数=1rad/秒のアナログプロトタイプフィルタ(正規フィルタ)を様々な可変ディジタルフィルタに変換するため、まず様々なアナログ周波数変換を行い、通過域端周波数が規定された別のタイプのアナログフィルタに変換する必要がある。本年度の研究では、任意の次数のアナログ低域通過フィルタ、アナログ帯域通過フィルタ、アナログ高域通過フィルタのコンピュータによる自動変換アルゴリズムを導出した。この変換は変換行列の演算で行う。次のステップは得られた様々なアナログフィルタ(低域通過、帯域通過、高域通過)をs-z変換(特にBL変換と呼ばれる双1次s-z変換)によって可変低域通過ディジタルフィルタ、可変帯域通過ディジタルフィルタ、可変高域通過デイジタルフィルタに変換することである。このステップでは、基礎研究としての一般化パスカル行列の利用が必要となる。 よって、本年度の研究実績としては、主に一般化パスカル行列およびアナログ周波数変換による様々なアナログフィルタの自動変換アルゴリズムの導出である。
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