本研究の目的は、ファジィ推論等の演算をネットワーク状に結合してモデリングする手法(Fuzzy Interface Unit Network: FIUNと呼ぶ)を用いて自律分散処理系を形成し、3つの高機能で実用的なシミュレータを構築することである。そして、それらのシミュレータによって、それぞれ実際の問題を解析する。19年度は3つのシミュレータについて以下の研究を行った。 1.(1)既に開発が進められている道路交通シミュレータMITRAMと実際の信号制御機15台とをTCP/IPで接続し、信号制御方式をシミュレータ上で検証する信号制御解析プラットホームを構築した。 (2)開発している自律分散信号制御方式を、上記のプラットホームを用いて実交通量データに基づくシミュレーション評価・検証を行い、開発している信号制御方式の有効性を調べた。 (3)道路交通シミュレータMITRAMに、交通量に応じて交差点地域毎に実時間で二酸化炭素(CO_2)の排出量を表示する機能を設け、いくつかのCO_2削減対策をシミュレーションによって比較評価した。 2.2つ目のシミュレータ、能動安全解析用ドライビングシミュレータでは、周囲の車両の運転挙動をMITRAMの方式、すなわちファジィモデルに基づくものとし、様々な運転挙動をシミュレータ上に設定できるようにした。また、能動安全の統計解析では多量のデータを必要とし、被験者ドライバーの実験負担が大きくなるので、それを回避できるようにファジィモデルを用いた自動運転機能を設けた。さらに被験者実験中に、ディスプレイ上に他車両間との潜在的危険度を示す指標TTCおよびPTTCを実時間表示できるようにした。 3.3つ目は市街地の車両の動きを監視する監視カメラシステムの構築のためのシミュレータで、本年度は有限のカメラ設置台数で、捕捉台数、コストについて最適な設置場所の組み合わせをGAを用いて探索する手法を開発した。その結果、全探索と比べ、GAを用いることで、1/20程度探索時間が軽減できることが明らかになった。
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