平成19年度には、前年度に試作した間接冷却ステージを含む装置筐体の改良と、マウントするSQUIDセンサデバイスの特性改善を行った。又、免疫反応検査への応用を想定して、ナノメートルサイズの磁性微粒子に結合したバイオターゲットを高感度SQUIDセンサにより磁気的に計測するための予備実験を行った。 間接冷却ステージの場合、冷却ステージを液体窒素に浸すことにより熱伝導でSQUIDを間接的に冷却するため、直接冷却型ほど熱収縮によるSQUID破壊に気を使わずに済むなどの利点がある代わりに、完全には液体窒素温度(77K)まで冷却しない可能性がある。H18年度に試作した装置においても、78〜79K程度に留まることがあった。H19年度においては、ステージへの熱伝導を改善することで冷却効率を向上させる一方、デバイス特性を向上させることで、より高温でも安定に動作可能にすることが可能になった。 実際の生体磁気信号計測・バイオ計測への応用としては、ナノメーターの粒径をもつ磁性微粒子(磁気マーカー)と結合したバイオターゲットがクラスターを形成し、そのクラスターの磁気緩和時間が未結合磁気マーカーの緩和時間よりも数桁長いことを利用した交流帯磁率測定法により、結合磁気マーカー量(結合バイオターゲットの量)に比例した出力を得ることを試みた。またその基礎実験を通して、交流磁場中の磁気マーカーの周波数応答など、多くの知見を得た。最終的な免疫反応検査プロセスとして完成するためには、まだ種々の他技術との融合が必要ではあるが、本年度の成果により、根幹となる要素技術としての「モバイルSQUIDを用いた高感度化磁気測定技術」を確立できたと考えている.
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