研究概要 |
近年の精密技術の進展に伴い,精密機器の分野において,マイクロメートルからナノメートルの分解能で変位の測定および制御をすることが重要となっている.そのような目的に空中超音波を用いることが考えられる.しかし,空気中においては変換器と空気との音響的なインピーダンス大きな不整合や空気中での音波の周波数に依存した大きな減衰などにより,高い周波数の音波の送受波が困難である.このため現在までに,空中超音波を用いて微小な変位を測定する研究はほとんどない.しかし結合液体を用いず非接触測定ができるうえ,波長が水中よりも短いことから超音波を用い,高精度で高い距離分解能を得る計測法について検討することは有用と考えられる. 本研究は,空中超音波を用いてナノメートル領域の距離分解能を得るための変位計測システムの開発,および使用する超音波の回折限界を超える空間分解能をもつ超音波計測システムを開発することを目的とするものである.これに関連する研究は超音波分野では皆無であり,そのため本研究ではまず,はじめに簡易な実験によって実現可能性を検討する.これには音波の伝搬時間ではなく音波の伝搬に伴う位相変化を高精度で測定する方法が考えられる.また,空間分解能を向上させる方法としては,円錐方プローブを開発し,その音場特性や距離特性を実験と解析によって明らかにする必要がある.その後改善を加えつつ計測システムの構築を行ない,イメージングや高精度の物体表面のトポグラフックな計測システムへと発展させる予定である.
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