本研究室で開発している6ポート型コリレータは二つの電磁波(波)の振幅比と位相差(複素振幅比)を測定する高周波計測装置で、従来の6ポート型リフレクトメータの複素反射係数測定法を応用し発展させたものである。これらの一連の研究成果を基に、現在主流となっているヘテロダイン方式ベクトルネットワークアナライザ(VNA)に替わる新しい計測概念に基づいたホモダイン方式6ポート型VNAの提案を行い、その測定理論、校正理論および計測制度の検討を行っている。 今回、研究・教育活性化を目的に科学研究費の支援を受け、周波数8〜12GHzでの小型6ポート型VNAを試作し評価する段階に至っている。 まず、これまでの研究成果を基に、市販部品を用いてシステムを構築し、測定精度の鍵となる電力測定を今年度物品費で購入したパワーメータで測定し、次に、これを市販のダイオードディテクタに置き換えることができた。 今回の試作機の評価過程で、ダイナミックレンジ、測定精度、等々さまざまな問題点が明らかとなり、来年度の当該研究の具体的な目標設定を明らかにすることができた。高周波領域で回路部品の配置や放射される電波の筐体との反射・共振等の影響を考慮したハウジング技術の習得は特に重要な課題の一つで、今年度の試作機を基に必要な手順を追って筐内に収めてゆく。実用化および製品化の可能性を次の課題の一つに設定しているので、この過程で精度評価を正確に行うために、各パート部品を次の手順で小型化を試みる。 (1)6ポート接合の小型化.(2)電力検出器、マイクロ波スイッチの小型化.(3)OPアンプ回路の小型化.(4)供給直流電源の小型化. 一方、現在の高周波計測を目的とした学生実験は主に10GHz導波管を用いた定在波測定によるインピーダンス計測実験が中心であり、VNAを用いた実験は予算の問題で現時点では不可能といわざるを得ない。今回の一連の実験を通し、現状の学生実験装置に簡単で安価な部品を追加することにより、6ポート技術を導入したVNAの測定概念を体得させる装置の開発を計画し、関係する特許申請の準備を行っている。 本年度の成果をまず特許申請し、学会発表すると共に、翌19年度にこれまで高価なため大学等の教育機関で導入するのが困難であったマイクロ波学生実験装置としての導波管X帯VNAの試作につなげる予定である。
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