茸類は免疫増強作用・臓器疾患改善などの健康食品として特に最近注目され茸工場で人工栽培が盛んであるが、至適成育条件(培地・温度・湿度・光など)は栽培現場の経験に大きく依存している。本研究では、新たな試みとして茸の成長の活性化と密接に関係がある生体電位信号を指標として至適生育条件に関して工学的側面から検討する。Growth Chamber内にて形態形成実験を幾度か実施し、得られた知見の確認を十分することで、現場で有用なLED光源システムの基本設計仕様を確立し、茸栽培装置の実用化を目指す。研究実績は以下の通り。(平成18年度)(1)自作型人工環境装置を更に改良(インキュベータ:温度・湿度・CO_2などの設定精度約5%以下)して、これまでの製作ノウハウを活かし、別途装置の2台目を新規に製作した。この装置の完成により、茸の各種光刺激(照射方法や波長)に対する子実体の生体電位の応答特性について、試行回数を増やし一般性を更に検証できる見通を付けた。(2)茸から誘発する自発性のバイオリズムを伴った生体電位信号を常時モニタリングすることで、バイオセンサとして活用し、その信号により特定の茸が周辺の茸への光刺激環境を制御する栽培技術を開発した。(平成19年度)(1)試作型簡易Growth Chamberを用いた形態形成実験(前年度の続き) 各種光刺激や温度刺激が形態形成に及ぼす影響を試作型Growth Chamberを用いて、継続実験を実施した。(2)茸自身をバイオセンサとした至適栽培を目指したLED光源装置の実用化 特定の茸自身をバイオセンサとしてバイオリズムをモニタし、その生体信号を利用して周辺の茸に対し、光刺激の明暗間隔を制御した。Growth Chamber内で栽培した結果を踏まえて、まず、種々の光刺激を与えた場合の成長の比較実験(形態形成実験)を茸工場の現場で光源システムの有効性を検証した(新光源装置の実用化(低価格化、コンパクト化、ランニングコストの低減化)を目指す)。栽培現場としては、これまでに共同研究を行っている県外の舞茸栽培工場で行った。なお、生体電位計測装置(申請者設計製作の小型軽量タイプ)と試作したLED光源装置には、本研究費をフルに活用して準備した。
|