研究概要 |
食品化学における酸化防止剤や化粧品などの基礎材料の開発では、この酸化力の強い一重項酸素を定量的に発生させ、その酸化力を利用して耐酸化性試験が行なわれている。この活性酸素種の一種である「重項酸素分子の代表的な発生方法としては、次亜塩素酸塩と過酸化水素水の混合による化学反応を用いる方法や、電子線やレーザー光源を使用し、ローズベンガル、もしくはその他の光増感色素を光励起する方法などが挙げられる。耐酸化性試験を行う場合、化学反応による一重項酸素分子の発生方法は、試験対象の材料そのものに直接化学反応する場合があり、正確さに欠ける。一方、電子線照射による発生方法は、線源そのものによる実験者の被曝や照射エネルギーが高すぎるので試料そのものが破壊されるおそれがあり、装置全体も大がかりなものとなるが、本年度における研究では、特に水溶性の高い一重項酸素を効率的に生成するローズベンガルの波長450nmから580nmまでの吸収帯に合わせた高出力グリーンLEDを用いて一重項酸素を発生させた。これまでの励起光源としては、これまで514.5nmに発光波長をもつアルゴンレーザーや、波長530nmの緑色半導体レーザー(緑色LD)が励起用光源として汎用されてきた。近年、高出力LDの開発により、これら励起用光源は気体レーザーから半導体製品に代替させることが可能になり、装置自体のコンパクト化がより一層進んだが、緑色LDよりもさらに安価で汎用性のある交通信号機用光源として市販されている超高輝度発光ダイオード(PG1-5LGS,発光波長535nm,発光半値幅約20nm、最大光出力5W,駆動電流700mA)を励起光源として用いて、一重項酸素分子の発生を試みた。得られた発光スペクトルは、1260nm付近に一重項酸素分子特有の発光のピークがあり、アルゴンレーザーや緑色LDで励起した場合と同様のスペクトルが観測されている。
|