研究概要 |
1 ビットAD変換器を用いて生成された2値信号(バイナリデータ)を用いたシステム同定に関する理論研究を行った。Wangらによりバイナリデータを用いたシステム同定法が提案されているが,その方法では入出力データに関する制約に問題があり,そのままでは現実の問題に適用することは難しかった。そこで,われわれは,この問題点を解決する新しいバイナリデータを用いたシステム同定法を開発した。この同定法では,まず,バイナリデータからシステムの定常ゲインを同定する。つぎに,インパルス応答を同定する。この際に,Wangらの方法に改善を加えて有界な入力を用いてもシステム同定が行えるように工夫した。最後に,同定されたFIR(Finite Impulse Response)モデルを伝達関数モデルに変換し,制御系設計に利用しやすいモデル形式とした。そして,数値シミュレーション実験を通して,提案法の有効性を確認した。 また,ΔΣ変換を用いたシステム同定法を提案した。そして,雑音の低減化,同定入力の設計などについて検討を行った。この提案法の有効性を確認するために,ネットワークシステムを介したシステム同定実験環境を作成した。これはネットワーク環境を介してDC(直流)モータのシステム同定を行う実験装置であり,同定実験からも提案法の有効性を確認することができた。 以上より,本研究では,低分解能なAD変換器を用いたシステム同定に関する理論構築と実験環境の構築を行い,提案法の実用化に向けての基礎的な検討を行った。
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