研究概要 |
本研究の目的は,運動野損傷による片麻痺患者を対象として,機能的電気刺激(FES)とロボット操作による運動刺激を組み合わせて,身体運動機能マップを運動野に再構築する手法を開発することである.運動野は,運動前野,補足運動野,大脳基底核を中心として生成される運動イメージ・プランを受けて,小脳との機能連携のもと,筋への運動指令を脳幹・脊髄系へ出力する.その際,運動前野を中心として生起される運動イメージと体性感覚・視覚からの感覚フィードバックが同時に入力されることが重要である.ここでは,麻痺肢を駆動するだけのレベルには達していないが,運動野から信号が伝達され,微弱ながら何らかの筋電位(EMG)が観測される患者を対象とする. 本年度はまず、意図する下肢の運動を想起することによって生じる脳波(EEG)の変化を実時間で検出する手法の開発を試みた.以下の手順で基礎実験を実施した. 1)音声によるトリガニ信号に同期して、健常な被験者に脳内に目標とする運動パターンを想起させた(運動前野,補足運動野に運動の構成イメージが生成される) 2)運動野上に貼付したCz電極より脳波を採取し,全波整流後,8-11Hzの帯域フィルターで平滑化した. 3)運動開始直後に生じる事象関連電位(Event-Related Desynchronization : ERD)を検出する手法を開発した. 4)テストデータに対して,運動想起後の0.5〜1.0秒間のデータから,90%の割合で運動想起を検出できた. 次年度は,運動想起に同期して,下肢に機能的電気刺激(FES)を加え,自己受容感覚(筋紡錘,腱器官,関節受容器他)を介して,感覚フィードバックを体性感覚野・運動野に投射させる.この訓練を繰り返すことによって,運動野からの運動指令が増強され,麻痺肢の筋群に対する適切な駆動信号が再構成させることを試みる.
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