平成18年度の理論的な研究実績及び理論の実証実験に向けた準備は以下のとおりである。 1)ジャンプシステムとリッカチ不等式に基づく線形及び非線形サンプル値系の予見H∞制御理論を構築した。具体的な予見H∞制御器の設計法を明確化し、幾つかの例のシミュレーションにより、その有効性を確認した。 2)船舶の追従制御に必要となる線形時変システムの出力レギュレーション理論を構築した。また、この理論を船舶の線形化システムに当てはめる場合の工夫を示し、船舶の定点保持や着岸制御に適用し、その有効性をコンピュータシミュレーションで確認した。 3)コンピュータ制御の観点から、サンプル値系の出力レギュレーション問題を定式化し、出力レギュレーション制御器の設計理論を構築した。また、実験船のモデルに構築した理論を適用し、定点保持制御、着岸制御、及び、通過点追従制御(衝突回避に必要)用の追従制御器を設計した。さらに、シミュレーションにより、設計制御器の有効性の確認と共に、非線形システムである船舶の線形制御理論による設計の限界点を明確にした。 4)実験船の製作(共同研究先)を完了し、GPS、ジャイロコンパスなどのセンサーと電動モータなどのアクチュエータの選定及び設置が完了した。 5)船舶の制御用モデルの導出と付加質量、減衰力のパラメータ同定を行い、制御器設計用モデルを確定した。 6)今後の船舶の制御系設計に必要となる非線形制御理論を安定化問題、バックステッピングによる非線形状態フィードバック設計法、非線形オブザーバ設計法を中心にまとめた。
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