研究概要 |
本研究は,大規模離散事象システムに対して,フォールトトレラントな分散制御系設計法の確立を目的としている.そのような制御系においては,高信頼な故障診断機能が不可欠である.そこで,離散事象システムの故障診断に関して,以下の研究成果が得られた. 1.故障検出可能条件の導出 現実の多くの大規模離散事象システムは,複数のサブシステムが並行的に動作する並行システムとみなすことができる.そこで本研究では,全体システムを構成することなく,各サブシステムのモデルのみを用いて判定できる,故障事象検出のための十分条件を導出した.この条件は十分条件であるが,判定が容易であるという実用上の利点を有する.また,制御系においてセンサ故障が発生し,ある可観測な事象が不可観測になってしまう状況で,故障事象検出が可能であるための必要十分条件,およびその判定法を明らかにした. 2.分散型故障予知診断手法の開発 故障予知診断は,故障の予兆を検出することで,その発生を未然に防ぐことにつながり,システムの安全性という観点から,非常に重要であると考えられる.離散事象システムモデルにおいて,故障に対応する事象列の集合が与えられた場合,それらの発生が分散型診断により予知できるための必要十分条件を示し,その条件を判定するためのアルゴリズムを提案した.さらに,故障予知が可能な場合,予知を行うための診断器のオンライン設計法を明らかにした.
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