本年度は、一般化正規直交基底を用いて確率的連続時間線形システムが確率的離散時間線形システムに変換されることの数学的な理論解明を行った。この種の変換は、従来、確定的システムに対しては定義されていたが、確率的システムで同様の結果が成り立つことを示した。具体的には、連続時間システムの解に対して、対応する離散時間システムの解が存在することを示した。逆に離散時間システムの解に対して、やや弱い意味ではあるが、連続時間システムの解が存在する十分条件を与えた。そして一般化正規直交基底の一種であるラゲール基底に関しては、この十分条件が満たされることを示した。変換されたシステムと連続時間システムの周波数応答の間の関係を考察した。 これらの結果により、変換システムを離散時間線形システムとして従来方法により同定することによって、連続時間システムの同定ができることの根拠を与えることができた。また周波数領域の考察からは、どのような一般化正規直交基底を用いることが、対象システムの既知情報を用いることになるかの手がかりを与えるものと期待できる。実際、その方針で研究を継続中である。
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