研究概要 |
昨年度までの研究によって、一般化正規直交基底を用いることによって、連続時間確率システムと離散時間確率システムの変換が引き起こされることが示され、二つのシステムの間の解の間に対応関係も存在することが明らかにされている。また部分空間同定法を用いた場合には、データを増やすことによって漸近的に同定システムは真値に確率1で収束することが示されている。また一般化正規直交基底の一種であるラゲール基底を利用するときには、制御対象の時定数などの大まかな既知情報があれば、適切なラゲール基底の選び方があることを示している。 今年度は、ラゲール基底を用いて、データ変換のみを行い、予測誤差法を適用したときの同定について考察した。その結果、推定値は不偏推定量とはならずバイアスを生じることがわかった。バイアスのない推定量を得るためには、操作変数(IV, instrumental variable)を用いる方法があり、IVの構成方法を提案した。ただし数値実験によれば、提案した操作変数の構成では、同定精度はそれほどよいものではなかった。これは、変換されたデータの利用方法としては、予測誤差法よりも部分空間同定法のほうが、好ましいのではないかということを示している。 部分空間同定法を用いた場合の、一般化正規直交基底や、ラゲール基底の選択基準については、数値計算による経験によって、制御対象の時定数との関係は明確になってきているが、理論的な解釈は未解明のままである。
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