研究概要 |
1.従来保有していた52CPUのBeowulfクラスタに本研究費でノード計算機を増設し,104CPUからなるBeowulfクラスタ計算機を構築した.並列計算の数値実験において,CPU数の増加に対して2[decade]の精度が確保されたため,アルゴリズム飽和特性の評価の精度が向上した. 2.並列化分枝限定法によるBMI(Bilinear Matrix Inequality)最適化において,(a)超直方体領域の最大長辺,(b)下界値の改善効率,(c)探索空間の低次元化を考慮した新しい分枝操作手法を提案し,有効性を確認した.提案手法は,固有値計算を行わずに少ない計算量で(b)を考慮でき,同時最適設計においては(c)の分枝変数の集中化が有効に機能することが確認された. 3.2.の分枝操作法に加えて,新たに係数行列のスペクトル半径を考慮した分枝ルールについても検討を行った. 4.並列化分枝限定法において,上界値更新情報のリアルタイム性向上による並列化効率の改善と,通信量増大によるCPU時間損失の低減化を両立させるため,可変計算粒度の並列化分枝限定アルゴリズムを提案した.48CPUからなるクラスタ計算機で数値実験を行い,最大計算粒度を規定するパラメータの最適化を行うことで高い並列化効率が実現できることを示した.しかし104CPUを用いたアルゴリズムの飽和特性に関する評価はまだできておらず,次年度の課題である. 5.実数値遺伝的アルゴリズムによるBMI最適化について検討し,交叉方法として単峰性正規分布交叉と外挿的交叉を援用し,また世代交代・探索において最小世代ギャップモデルおよび生得分離モデルを用いた探索アルゴリズムを提案した.また,BMIの構造的な特性を有効に活用したLMI緩和推定による個体生成手法を考案し,同時最適設計に援用可能な実用的なアルゴリズムを開発した.これらを並列化したアルゴリズムはまだ実装できておらず,次年度にBeowulfクラスタ計算機上で並列稼働させる予定である. 6.制御システムが重要な役割を果たす実用的な工業製品として磁気軸受に着目し,PID補償器による多目的制御について考えた.ディスクリプタ形式を活用することで,システムの係数行列に構造系のパラメータが多項式形式で現れるようモデリングできることを示した. 7.係数行列に多項式形式で構造パラメータを含むシステムに対して,制御仕様をBMI形式で表現し,BMIを繰り返し解くことで準最適解を得るアルゴリズムを提案した.梁構造モデルにおいて数値実験を行い,有効性を評価した.
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