研究概要 |
本研究では,むだ時間を活用した結合システムの解析と同期制御について,次の二つのサブテーマに基づき研究を行っている. (a)遅延結合を含む2結合系の同期制御における時変むだ時間の影響とむだ時間制御 (b)N結合セル系における遅延結合による同期化の解析と同期化制御設計 本年度においてそれぞれのテーマの下で得られた成果は,次の通りである. (a)むだ時間制御による入力むだ時間非線形システムの安定化法について検討した.また,遅延結合を含む2結合系の同期について検討し,半消散性の概念を導入し,さらに小ゲイン定理を遅延結合系に適用することにより,結合系の各サブシステムの状態の有界性とその上界を示した.さらに,得られた上界を用いて,結合システムが同期するための十分条件を線形行列不等式条件として導出した.これらの結果は,結合が時変むだ時間を持つ場合に対しても拡張可能であることも明らかにした.さらに,結合に用いられる各サブシステムの出力が制限されている場合について,各サブシステムの相対次数が1となる場合について検討し,同様に各サブシステムの有界性条件と同期条件の導出を行った.これらは,ローレンツシステムを用いて数値シミュレーションにより検証されている.また,anticipating synchronizationについて,マスターシステムの出力が制限されている場合について,オブザーバを併用した予測同期系の構成法を提案した. (b)(a)で得られた結合システムの有界性条件と同期条件を結合サブシステムが3つ以上の場合に対して拡張するため,まずN=4の場合について検討した.ネットワークの対称性を考慮することにより,自然な形で拡張できることを明らかにした.また,一方向結合,双方向結合の場合についてそれぞれ検討を行い,それぞれの場合に対応する有界性条件と同期条件を導出している. また,本研究においては,次年度電気回路を用いた実験による検証を予定しているため,本年度においてはその実験回路の製作を行った.
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