本研究では、非因果的逆系に基づく予見フィードフォワードを含んだ2自由度制御系の設計を、連続時関係およびサンプル値系について両側Laplaceおよびz変換を用いた枠組みでそれぞれ定式化することで、その設計問題をノルム最小化問題として同様に扱えることに明らかにした。一方、サンプル値系にはほとんどの場合に連続時関系と関連のない不安定零点が現れることから、前者が後者の近似になっているかどうかについての疑問が生じたため、両者の差異を両側Laplaceおよびz変換を用いた枠組みで理論的に考察した。その結果、非因果的逆系に基づく予見フィードフォワードを求めることは数学解析的には第I種Fredholm積分方程式の求解と等価になることが分かり、予見フィードフォワードの問題はその特別な場合として位置づけられることが分かった。そして、サンプル点上での完全追従を達成する予見フィードフォワード制御について、サンプル周期を0に近づけると対応する連続時間予見フィードフォワード制御に漸近することが数学的に証明できた。これによって、零点の差異にもかかわらずサンプル値逆系は一般に非因果的な枠組みにおいてはもとの連続時間での逆系を近似していることが分かり、予見フィードフォワードを含んだ2自由度制御系は両者において同様に最適設計ができることが分かった。さらに、従来はサンプル値伝達関数の零点のサンプル周期に関するテイラー展開公式は一部についてのみ知られていたが、残された零点についてもテイラー展開公式が得られた。
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