研究概要 |
CFRP格子筋を既設鉄筋コンクリート構造物の側面に配置し、せん断耐力の向上を期待する場合の補強効果について、要素試験、せん断付着強度試験および梁載荷試験により検討した。 これらの検討の結果、斜めひび割れ近傍のCFRP格子筋のマス目部のせん断付着抵抗域の移行を考慮し、既設コンクリート構造物のコンクリート面と吹付けモルタルのせん断付着強度をもととして、CFRPのせん断耐力向上効果を評価できることを示した。 要素試験では、基盤コンクリート(300mm×300mm、t60mm)にCFRP格子筋の配置、モルタル吹付けを行った試験体を用い、CFRPの引抜き試験を行った。要素試験より、CFRPの種類、すなわち、筋番(CR4,CR8,CR13)ならびに格子間隔(50mm、100mm)と表面処理方法(凹凸状況、プライマーの有無)をもとに、CRFPの破断、コンクリートとモルタルとの付着破壊、吹付けモルタルの割裂引張破壊の3種類の破壊形態が推測できることを明らかにした。なお、せん断付着強度試験より求まった、表面処理状況(ブラスト処理、ディスクサンダー処理)とプライマーの有無の組合せによるせん断付着強度が上記の3種類の破壊形態を支配することになる。 梁試験体(h500mm×b240mm、L2700mm)を用いた載荷試験より、側面に配置したCFRP格子筋のせん断耐荷挙動を明らかにし、せん断抵抗性を向上させるため、部分的に格子筋の剛性を高めることでせん断耐力が向上することを示すとともに、格子筋の種類や表面処理方法で耐力に大きな差が生じることを明らかにした。 以上、CFRP格子筋と吹付けモルタルを用いたせん断補強において、コンクリートと吹付けモルタルの界面のせん断付着特性を考慮することにより、せん断耐力の算定が可能であることを明らかにした。
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