研究概要 |
本研究では,マスコンクリート構造物を想定した温度環境下において,高炉セメントを用いたコンクリートの物性値(圧縮強度,引張強度,ヤング係数)を実験的に把握し,合わせて拘束応力試験を実施して応力発生状況およびクリープ特性について検討した。特に,高炉セメントを用いたコンクリートの温度ひび割れ低減を目的として,粒度および化学成分を調整した高炉セメントB種および試作した石灰系膨張材の温度応力低減効果に着目して実験・検討を行なった。さらに,壁厚0.8mの壁状構造物を対象としてFEM温度応力解析を行い,ひび割れ抵抗性に及ぼす自己収縮および自己膨張の影響について定量的に検討した。本研究の範囲内で明らかになった事項を以下に示す。 (1)低発熱・収縮抑制型高炉セメントを用いた場合および一般の高炉セメントB種に試作膨張材を混入した場合,一般の高炉セメントB種のみを用いた場合と比較して温度降下時における応力強度比が小さくなり,ひび割れ抵抗性に優れていることが認められた。 (2)低発熱・収縮抑制型高炉セメントまたは一般の高炉セメントB種に試作石灰系膨張材を混入した場合,同一圧縮強度におけるコンクリートの割裂引張強度は,膨張材を混入していないコンクリートと比較して若干大きくなった。 (3)高温履歴条件下におけるコンクリートの見かけの有効ヤング係数は材齢2日以前で小さく,特に試作石灰系膨張材を混入したケースでは,一般の高炉セメントB種を用いた場合と比べてかなり小さくなった。
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