研究概要 |
ダムコンクリートのひび割れ制御の合理化を目的とし,実際のダムで使用された材料・配合についての物性把握試験,および中規模重力式ダムをモデルとしてFEM温度応力解析を実施した。すなわち,フルサイズ骨材を用いたダムコンクリートについて,自己収縮および断熱温度上昇量を把握するとともに,拡張レヤー工法(ELCM)により施工される重力式ダムについて3次元FEM温度応力解析を行った。 その結果,高炉セメントを用いた場合は,外部コンクリートや着岩コンクリートにおいては大きな自己収縮が生じ,これに起因して発生する引張応力がひび割れの発生原因になりうることが明らかとなった。3次元FEM温度応力解析の結果によると,ダムの上下流面近傍においては,自己収縮ひずみの大きさが異なる外部コンクリートと内部コンクリートとの間に内部拘束によってダム軸方向の引張応力が発生し,外部コンクリートの鉛直方向ひび割れの発生に影響を及ぼすことが示された。また,着岩コンクリートにおいても,自己収縮が基礎岩盤に拘束されることによって,上下流方向の引張応力が増加することが示された。従って,ダムコンクリートの自己収縮は,ダムの安定性、止水性および耐久性に悪影響を及ぼすひび割れの発生要因になりうることから,ダムコンクリートの温度ひび割れ制御においてその影響を考慮する必要があることを示した。 さらに,中庸熱ポルトランドセメント,中庸熱フライアッシュセメント,高炉セメントB種および低発熱・収縮抑制型高炉セメントを用いた外部および内部コンクリートについて,自己収縮試験を実施した。その結果,セメントの種類によりダムコンクリートの自己収縮は著しく異なり,セメントの選定によりダムコンクリートのひび割れ抵抗の向上を図れる可能性があることを指摘した。
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