研究概要 |
高炉セメントB種を用いたコンクリートの自己収縮ひずみは,普通ポルトランドセメントを用いた場合と比べて大きく,高温履歴を受けると初期材齢における自己収縮の進行速度が大きくなり,終極値も大きくなることを実験により明らかにした。自己収縮の終極値および進行速度を最高温度の関数として定式化し,温度履歴の影響を考慮した実用的な高炉セメントコンクリートの自己収縮ひずみの予測式を提案した。提案した自己収縮ひずみの予測式は,日本コンクリート工学協会「マスコンクリートのひび割れ制御指針2008」の設計用値として採用された。 低発熱・収縮抑制型高炉セメントを用いた場合,温度上昇過程において,自己膨張に起因する圧縮応力が導入されることが認められ,一般の高炉セメントB種および普通ポルトランドセメントを用いた場合と比べて引張応力-強度比が小さくなり,温度ひび割れ低減効果が認められた。これにより,高炉セメントの比表面積,三酸化硫黄(SO_3)量および高炉スラグ混入率を調整することにより,マスコンクリートの温度ひび割れ抵抗性は著しく向上することが明らかとなった。 フルサイズ骨材を用いたダムコンクリートについて,自己収縮および断熱温度上昇量を把握するとともに,拡張レヤー工法(ELCM)により施工される重力式ダムについて3次元FEM温度応力解析を行った。その結果,高炉セメントを用いた場合は,外部コンクリートや着岩コンクリートにおいては大きな自己収縮が生じ,これに起因して発生する引張応力がひび割れの発生原因になりうることが明らかとなった。さらに,セメントの種類によりダムコンクリートの自己収縮は著しく異なり,セメントの種類の選定によりダムコンクリートのひび割れ抵抗の向上を図れる可能性があることを指摘した。
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