研究概要 |
大型鋼構造物の被覆防食材として、近年、高い直流抵抗値を有する高性能重防食コーティングが使用されるようになった。従来の集中定数系回路素子に基づく測定では、コーティングの劣化挙動や健全性を十分評価できない現状である。本研究の最終目標は、構造物全体としての健全性を評価できる保全管理技術を確立することであり、第一に取り組むべき課題は、電気化学インピーダンス測定に基づく新しい評価モデルを確立することである。本年度は,コーティングの化学劣化の程度とインピーダンス特性値との相関関係を明らかにすることを目的とした。以下に、得られた成果を示す。 (1)長期塩水曝露試験及び劣化加速試験におけるインピーダンス測定による劣化追跡 平成19年度より試験開始した長期塩水曝露試験及び劣化加速試験を本年度も継続して行い、インピーダンス測定による劣化挙動の約1年に渡る経時変化が追跡できた。 (2)長期塩水曝露試験で不具合が生じた被覆材の化学分析及び水蒸気透過性の評価 長期曝露試験でインピーダンス特性が劣化している試験体に関して、電子線マイクロアナライザを用いた被覆材断面の元素分析により塩化物イオンの浸透が明確に認められた.さらに、高周波式水分計による被覆材への水分の透過を測定した結果,水分率とインピーダンス特性値とに相関関係があることが分かった。 (3)温度勾配浸漬試験の実施 劣化加速試験の他の方法として、塗膜面の表裏に温度差をつけ劣化を促進させる温度勾配試験がある。今年度は、この試験機を独自に製作し比較的短時間でフクレの劣化傾向を再現することができた. (4)長期塩水曝露試験、劣化加速試験、温度勾配浸漬試験データの解析・評価 長期塩水曝露試験、劣化加速試験、温度勾配浸漬試験で得られたインピーダンス測定結果を詳細に解析し、前年度検討した分布定数系回路素子を用いた等価回路モデルの適用性を実証した。
|