研究概要 |
本研究では不整形地盤によって生じる複雑な地震応答を検討するために,(1)境界要素法による応答解析とHuygensの原理に基づいた定性的な検討,(2)SH波動場における境界要素-摂動解法に基づく定量的な散乱波解析,(3)P-SV波動場における境界要素-摂動解法に基づく定量的な散乱波解析を行った.この結果,(1)不整形地盤の複雑な地震応答は着目する点の周囲から到達する散乱波の干渉によって検討することが可能であること,(2)本研究で新たに展開した境界要素-摂動解法によって得られる級数解がHuygens-Fresnelの定理と類似した形式を有する変位表現であり,また,散乱波の影響を考える上で傾斜係数∂r/∂nが有効な指標となること,(3)谷底の点では,向かい合う斜面部分から入射波と同じ極性(正の極性)を持つ散乱波が,また,周囲の谷地形から入射波と逆の極性(負の極性)を持つ散乱波が生じ,どちらも一次散乱波によるものが支配的であること,(4)山頂の点では,この点の属する凸地形の全域から正の極性を持つ非常に強い寄与が生じており,この寄与波形についても一次散乱波が支配的であること,(5)P-SV波動場においても一次散乱波の性質を近似的に傾斜係数∂r/∂nによって解釈することが可能であることなどが明らかになった. なお,(1)SH波動場の散乱波に関する成果は,2006 European Conference on Earthquake Engineeringで発表をおこない,(3)P-SV波動場の散乱波に関する成果は投稿準備中である.
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