研究概要 |
本年度は大きな地震被害を生じた2007年中越沖地震における柏崎-刈羽原子力発電所の地震記録に加え,2008年岩手・宮城内陸地震における防災科学技術研究所KiK-net-関西,KiK-net-関東観測点の鉛直アレー観測記録を用いて,本震時と本震後の地盤の非線形性状について検討した.解析は川上らによるNIOM法を用い,余震と本震以前の地震に対しては,それぞれの主要動部についてS波速度を推定した.一方,本震記録においては時間ウィンドウを移動させながらS波の初動からコーダ部まで連続的に解析を行い,S波の伝播時間の変化を求め,時間ウィンドウごとの地震動強度との関連で論じた.これらの検討の結果,柏崎-刈羽原子力発電所ならびに-関西における観測点の結果から,(1)本震主要動において,強震動に起因する地盤の非線形化によって,S波の伝播速度が大きく低下したこと,(2)上記の伝播速度の低下は,勇断剛性率が初期剛性の30〜40%程度まで低下したことに相当し,このときの最大勇断歪は0.1%以上に達するものと推定されること,(3)本震コーダ部や本震直後の余震の解析から,本震直後のS波の伝播速度が本震以前の伝播時間よりも小さい値を示し,緩やかに増加する傾向が見られるものの,本震かう6ヶ月程度経過した時点においても完全は回復していないこと,(4)柏崎-刈羽原子力発電所の地震記録の解析結果においては,水平2成分間でS波速度の異方性が見られること,などを指摘した.
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