地震や津波などの自然災害や、車両・船舶の衝突、群集事故などの人為的な災害による被害軽減策を検討する上で、被災メカニズムの解明は重要な課題である。本研究は、バイオメカニクスやキネシオロジー(kinesiology:身体運動学)の先端的な知見を応用して、直接被害を受ける人体側からの視点による減災策の検討を試みるものである。既往の、いわゆるクラッシュ・ダミーよりも高精度で、防災用に特化したサイバー・ダミー(コンピュータでシミュレーション解析が可能な有限要素モデル)の全身モデルの開発を最終的な研究目標としており、本研究課題はその一環として、胸郭部と大腿部の有限要素モデル化を行うものである。 本年度(平成19年度)は、1.昨年度の研究成果の発表(査読付論文2件:安全工学シンポジウム、土木学会地震工学論文集)を行うと伴に、2.昨年度構築した研究環境の維持(汎用衝撃応答解析プログラムの使用許可の取得、2年目)を行い、次に、3.昨年度開発した、汎用有限要素法解析ソフト(COSMOS WORKS)と汎用3次元設計ソフト(SOLID WORKS)を用いた「軟組織のソリッド要素の半自動分割手法」により、右半身の人体有限要素モデルを作成した。過去に入手していた市販の人体データ(臓器なども含む全身モデル:anatomy data)をベースとして、「平成15年度国民健康・栄養調査報告」における20歳代の日本人の身長の平均値となるように寸法を調整して、身長1716mmの成年男性の人体モデルを完成させた。
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