地震や津波などの自然災害や、車両・船舶の衝突、群集事故などの人為的な災害による被害軽減策を検討する上で、被災メカニズムの解明は重要な課題である。本研究は、バイオメカニクスやキネシオロジー(kine-siology:身体運動学)の先端的な知見を応用して、直接被害を受ける人体側からの視点による減災策の検討を試みるものである。既往の、いわゆるクラッシュ・ダミーよりも高精度で、防災用に特化したサイバー・ダミー(コンピュータでシミュレーション解析が可能な有限要素モデル)の全身モデルの開発を最終的な研究目標としており、本研究課題はその一環として、胸郭部と大腿部の有限要素モデル化を行うものである。 本年度(平成20年度)は、1.昨年度の研究成果の発表(査読付論文2件および査読無し論文2件、計4件:安全工学シンポジウム、地域安全学会論文集、14^<th> World Conference on Earthquake Engineering、地域安全学会研究発表会梗概集)を国内外で行うと伴に、2.研究環境の維持(汎用衝撃応答解析プログラムの使用許可の取得、3年目)を行い、次に、3.昨年度完成させた、身長1716mmの成年男性の人体モデルを用い、その軟組織の材料定数に関する検討を行った。さらに、4.情報通信研究機構の2mmの立方体を単位とした人体データベースから、滑らかな曲面を持つロフトを作成するためのデータ処理方法について検討した。輪郭追跡処理のアルゴリズムを開発し、各パーツの輪郭を成す要素のみを取り出すことができるようになった。
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