腐食したケーブルが、湿った厳しい腐食環境下にそのまま保持された場合、防食措置を行なった場合について、その腐食と防食効果を調べるために、新品の裸鋼線を19本束ねた試験体を用い、無防食の状態で湿った状態に保持した時と、試験体にいろいろな防食を施した時の腐食状況について比較した。 その結果、防食を施さなかった試験体は、外層ワイヤには錆瘤状の大きい腐食が生じた。内層ワイヤは、全体に腐食するが、ワイヤの接触部に筋状に伸びる腐食を生じた。ただし、腐食量は外層ワイヤに比べ小さかった。外層ワイヤの腐食が大きいのは、腐食に必要な酸素が多く供給されることと、ガーゼに接した部分で錆瘤が発生していることから酸素濃淡電池による腐食が生じたためと考えられる。酸素濃淡電池とは、酸素が供給されやすい部分と酸素が供給されにくいところで、環境の違いにより電池を形成し、酸素の供給されにくいところが局部的に腐食する現象である。 防食を施すことにより、外層ワイヤには防食効果が認められたが、ケーブル内部のワイヤの防食効果が認められないものが多かった。ただしエポキシ充填を充填したものや、送気乾燥したものは、内部まで防食効果が確認された。腐食したケーブルをそのまま湿った状態に保持した場合には、さらに腐食が進行する。その防止には、外層を被覆することが効果的である。ただし、外層を被覆しても内層までは防食することは困難であるが、エポキシなどの樹脂を積極的に充填し、腐食の原因となる水や酸素の供給を低減するか、あるいは送気乾燥して湿った環境から回避することにより、内部も防食可能なことがわかった。
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